アメリカと日本のアスリートの「引退後の人生」
- Karyo Sugimoto

- 22 分前
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こんにちは、アメリカに留学中のkaryoです。今回は、私がアメリカで感じたスポーツ選手の引退後(アフターライフ)について話したいと思います。日本でも現役を退いたアスリートがどう生きるかという話題はよく耳にしますが、アメリカに住んで、みたり聞いたりしてみると、その構造の違いが想像以上に大きいことを痛感し、それを今回は紹介していきたいと思います。
目次
1.引退後も勝負は続いている

スポーツ選手のキャリアは短く、どんなに才能があってもいつかは必ず終わりがきます。これはアメリカでも日本でも同じです。
しかし、その引退後をどう迎えるかという点で、2つの国の間には大きな違いがあります。
アメリカでは、大学スポーツの段階から引退後の準備が教育の一部として組み込まれています。 NCAA(全米大学体育協会)は、学生アスリートに学業支援やキャリア教育を提供し、卒業後も社会で活躍できるような仕組みを整えています。 NCAAについては前回のブログに記載されているのでぜひ読んでみてくださいNCAAとは?
また、アメリカでは「スポーツは教育の一部であり、人生のキャリア形成の一部」という考え方が一般的です。学生のうちから競技だけでなく、将来の仕事、ブランド構築、マネジメントなどを学ぶことができます。
2.一方で、日本のアスリートの現実
日本では、アスリートが幼いころから競技に専念する傾向があります。練習漬けの毎日で、社会経験やビジネススキルを身につける機会は少なくなりがちです。
現役時代はチームやスポンサーに守られていますが、引退した瞬間からその支えがなくなります。「次に何をすればいいのか」「どんな仕事ができるのか」と戸惑う選手が非常に多いのです。実際に、日本のスポーツ選手の約9割が引退後のキャリアに悩んでいるという調査結果もあります。 その理由の多くは、方向性が見つからない、収入が安定しない、スキルに自信がないといったもの。華やかな現役時代の裏で、次のステージに進むための準備不足が大きな壁になっているのが今のスポーツアスリートの現実です。
3. アメリカでも「成功の裏にある影」
アメリカのアスリートたちは、大学時代から手厚い支援を受けているように見えますが、実はここにも「影」があります。NFL(アメリカンフットボール)のデータでは、元選手の約70%が引退後5年以内に破産しているという衝撃的な数字があります。NBAやMLBでも似たような傾向があり、華やかな世界の裏に、経済的・精神的に苦しむ人たちがいるのです。
実際、ケガや契約終了をきっかけに一気に収入を失い、ホームレスになる元アスリートも存在します。有名な例では、1980年代にアメリカで活躍した自転車選手レベッカ・トウィッグが、引退後にホームレスとして暮らしていたことが報じられました。スポーツの世界では、成功と孤立、富と貧困が隣り合わせに存在しています。 引用:https://trainright.com/retired-elite-athletes-open-up-about-post-career-battles/
4. それでもアメリカが「再起できる」理由
それでもアメリカがすごいのは、「失敗した人をもう一度立ち上がらせる仕組み」があるということです。
たとえば、オリンピック委員会やNCAAは「Athlete365 Career+」などのキャリア支援プログラムを設け、引退した選手たちが再び社会で活躍できるように支援しています。
このプログラムでは、心理的サポート、職業トレーニング、ネットワーク形成などを行い、 実際に多くの元アスリートがコーチ、起業家、メディア関係者などとして新たな道を歩んでいます。
つまりアメリカでは、「引退=終わり」ではなく、「キャリアの転換点」として捉えられているのです。
5. 日本とアメリカの違いは「仕組み」だけではない

アメリカの強みは、制度面だけでなく、文化の違いにもあります。
「スポーツは教育であり、社会を作る一部」という価値観が深く根付いているため、アスリート自身も「競技以外の自分」を育てることに抵抗がありません。
一方、日本では「スポーツ=努力と根性」「教育とは別」という考え方がいまだに強く残っています。そのため、スポーツ以外の分野に興味を持つことを“逃げ”のように捉えられることもあります。
しかし現実には、アスリートも一人の人間です。 競技が終わったあとにどんな人生を歩むかこそが、本当の「キャリア」だと私は思います。
6. 成功の定義を「競技の中」だけに置かない
アメリカのアスリートを見ていて感じるのは、彼らが「引退後の人生」について話すことを恥ずかしいと思っていないことです。むしろ、次のステージを見据えて行動することがプロフェッショナルとされます。
アスリートとして身につけた集中力、協調性、忍耐力、リーダーシップは、どんな業界でも通用する力です。そしてそれを自信を持って社会で活かしていく文化がアメリカにはあります。
日本でも、スポーツで培った力を「社会でどう活かすか」という意識が広がれば、アスリートの人生はもっと豊かになると私は思います。。
7. 最後に
アメリカに来てから、私はスポーツの見方が大きく変わりました。
ここでは、アスリートが競技人生を終えたあとも、また別の形で輝き続けることが当たり前ように語られます。引退は怖いものではなく、新しいスタートとして捉えられている。
そして同時に、成功した選手でさえ突然のケガや環境の変化で生活を失い、ホームレスになってしまう現実も見ました。華やかな舞台の裏で、人生が一瞬で崩れることもあるその光と影を両方見たからこそ、アスリートが競技の外でも生きていける力を持つことの大切さを強く感じています。 日本でも最近、野球選手が農業に挑戦したり、競技経験を活かして研究職に進んだり、社会起業家になるなど、引退後に新しい道を切り開く選手が増えています。それを見ると、スポーツで培った力は競技だけのものじゃないと感じます。アスリートは競技が終わった瞬間に価値がなくなる存在ではないということです。むしろ、引退後にこそその人の本当の強さや個性が現れます。 努力し続ける力、チームで動く力、困難を乗り越える力これらはどんな社会でも必要とされるものです。
これからの時代、アスリートに求められるのは「競技の中の成功」だけではありません。引退してからどう生きるか、どう自分の価値を広げていくか。その姿こそ人の心を動かし、スポーツの価値をもっと深いものにしていくのだと私は思います。私自身、アメリカで多くのアスリートと出会い、その葛藤や挑戦を身近で見て、引退という言葉が持つ怖さよりも、これからどう生きるか、というワクワクの方を大切にすべきだと感じました。
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