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IoTとクラウドが作る未来#9 ブロックチェーンと暗号通貨2


先日、アマゾンのS3というクラウドサービスで大規模な障害が発生し、相当数のサイトが動かなくなりました。一部のシステムを不用意に止めてしまった為、全体を再起動する必要が生じたそうです。これは従来の中央集権型システムの弱点であり、それを解決する仕組みが初めから入っているのが、今回説明するブロックチェーンの分散型のアーキテクチャです。

ちなみに最近は分散型のシステムが流行っているようで、時期Twitterになるのではないかと(主に日本で)言われているマストドンも、ブロックチェーンとはまた少し違うタイプの分散型です。いつの時代も主流の問題点を解決するサービスは流行るのですが、分散型をマーケティングの売り文句として使うには、今は良い機会だと思います。

では従来の集権型システムというのは、どういう仕組みなのでしょうか?ここでは図書館での本の貸し出し記録を保存する台帳を例に説明します。

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まず本の入荷と貸出記録を全て台帳に書く人がいます。台帳に記録するまで本の貸し出しは出来ません。この記録を書き換えられたりページを紛失すると困るので、台帳をコピーする人を雇いました。もしオリジナルに何かあっても、コピーを使えば修正出来ます。

ただし、本の貸し出しが行われた直後にオリジナルを無くした場合、コピーが終わっていなくて正しい経緯が分からなくなる可能性があります。この場合、正しい記録を作り直すためには、図書館の本を全て棚卸しする必要があります。

またオリジナル台帳が書き換わってもコピーで修復できると書きました。オリジナルとコピーを比較すれば、記録が変わった事はわかります。ただし、どちらが書き換わったかはわかりません。ひょっとしたら両方書き換わっているかもしれません。この場合も棚卸しが必要です。これが普通の図書館だと大きな問題にはならないですが、例えば職員が非常に少なく、お客さんがひっきりなしにくる場合、貸出業務は非常に遅れてしまいます。最悪の場合は一時的に貸出業務を止めることになるかもしれません。

ここでもある種の責任の分散は行われているという事に注目して下さい。管理者が二人いるので、データを完全に失うリスクは減ります。しかしそれでもデータを失った時の作業が膨大になる可能性があります。また、オリジナルの台帳を書く人が記録を捏造すれば本を盗むことも出来るので、管理者の信用が非常に大事になります。また、管理者にある種の権力が集中します。

ブロックチェーンの場合はオリジナルの台帳が複数存在し、全部の台帳には同じ事が書かれています。この場合、台帳が一つや二つ無くなっても安心です。また台帳の正しさは多数決で決めるので、どの台帳が改変されたのかを調べる必要はありません。これが従来のシステムに比べてより民主的と言われる所以です。

もう一つ別の例を挙げます。「生物と無生物のあいだ」という本で、なぜ動物はある程度の大きさがあるのか?という疑問に答えてくれる下りがあります。動物は細胞の集合体ですが、別にもっと小さくても生物としては機能します。例えばアメーバのように単細胞でもいいわけです。それなのにあえて一定量の細胞が集まっているのは、自己再生能力の為だそうです。細胞が沢山あるので、怪我などして一部が破損してもシステム全体としては機能するし、壊れた部分を補修する事もできます。ブロックチェーンの仕組みも同じようなものです。

ただし、全体の半分以上の台帳が同時に書き換えられたりすると、非常に困った事になります。それを防ぐために、ネットワーク上で物理的に台帳が分散しています。また、データの改変を台帳の管理者が検出しやすくなっているし、そもそも変更自体が非常に困難になっています。このセキュリティ面の強化に暗号化の技術が使われており、これについては次回説明します。

Written by plsplsme

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